多古町と横芝光町にまたがる多古光湿原の整備の日でした。
実は私、多古光湿原保全会の会員でもあります。
湿原について書くとものすごく長くなるので省きますが、大まかには3500年~3000年前ぐらいの小氷期に定着した寒冷地及び海浜性の植生と現在の温暖な気候に適応した植生が混在してみられる湿地であり、地形や気候の変動を今に伝える貴重な環境です。
大勢で進める作業は凄まじく速い!
1990年ごろまでは実際に萱刈りが行われていました。この湿原の環境が長い間維持されてきた理由の一つにこういった人為的な攪乱があります。高山や寒冷地に形成されるような湿原と違い、現在の千葉県の環境下ではあっという間に他の植物にとって代わる遷移が進んでしまいます。
作業中、将来的に公開を検討している植物観察路の園路計画のお話がありました。
環境にも配慮すべきだし、火も使えるように、そしてメンテナンス・・・。
湿原の観察路とは庭しごとをする上で考えたこともないので熟考が必要です。
コオニユリの鱗茎。いわゆるゆり根ですが、まさに本物。
この日ご指導いただいたみなさんありがとうございました。
こちらは初夏から初秋にかけての湿原の景色。
周辺では世界中でもここでしか見られない草本3種類(ムジナクグ、ヤエノアマナ、ホタルイモドキ)を含め、県内でも有数の希少な生物が多数みられます。
豊かな生物多様性を保っていきたいです。
作業前には近くの乾草沼へ立ち寄りました。
トチカガミなどの豊かな環境を示す水生植物もみられますが、ハスやオオフサモといった水質汚染に強い種に押されつつあるようです。トチカガミは有史以前に農耕文化と共に東アジアより渡ってきた史前帰化植物、ハスは大陸より栽培品として移入管理されていたものが野外に逸出したもの、オオフサモは観賞用として移入されたものが逸出した近代の外来種とされています。
こちらは明治時代と現代の付近のようすを比較した地図です。(クリックで拡大します)
現在の沼は往時の痕跡をとどめる程度であることが分かります。
九十九里にはこのような沼と微高地が連続する地形が多く見られたようです。
これはかつての海の名残を示す海跡湖とされています。
同じ栗山川沿い、同じく海跡湖である坂田池のようす。
現在はふれあい坂田池公園として整備されています。
カメラを構えると一斉にカモが逃げていく・・。
園内の片隅にある湿性植物園。ジュンサイやヒメイズイなど、付近から採集された県内で絶滅が危惧される多数の植物が移植されていますが、木道は朽ち、空き缶のゴミが散らばっているわで、残念な様子でした・・。
地図の左上に湿原が、海跡湖の並びに坂田池や乾草沼がみられます。また現在は無い鳥喰沼があり、地名として残っているようです。
地図の比較だけでも栗山川流域のようすは100年ほどで大分変ったことが分かります。
特に、それまで蛇行していた流れを直線にした護岸改修工事による影響が大きいのではないでしょうか。
瀬と渕の差は曖昧になり、洪水も劇的に減った代わりに、環境差を利用して生息環境を維持していた生き物の姿はみられなくなりました。
おまけ。帰り道、自宅から最も近所の湿地に寄り道してきました。
特に保全されているわけでもなく、近い将来確実に開発が進んでしまう場所ですが、大好きな地です。時期によってはミドリシジミの乱舞やツリフネソウが一面に咲く光景がみられます。
上記の能満谷津の今昔。昔は辺り一面松林だらけ。
比較地図についてはこちらで見られます。関東近郊にお住まいの方は過去のようすに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。庭を計画するうえでも、過去の地形を知ることはとても大切だと思います。
富山で見た沢スギ、多古光湿原でみられるイボタノキのように、このような水に漬かる特異な環境で成長するハンノキは、庭木としても重要なポイントになりそうな気がするけど果たして。
長々と失礼しました。最後まで読んでいただきありがとうございました。
コメントをお書きください
石橋 淑惠 (水曜日, 20 6月 2018 19:23)
昨年度の【多古光湿原写真展】のパンフレットを見て
一度訪ねたいと予定してます。
甲野靖夫 (月曜日, 25 6月 2018 10:14)
愛情あふれるレポートで感銘を受けました。
武田眞幸 (木曜日, 12 7月 2018 20:37)
甲野靖夫様
ありがとうございます。また覗いていただけると嬉しいです。
武田眞幸 (木曜日, 12 7月 2018 20:39)
石橋 淑惠様
コメントありがとうございます。次回の観察会についてブログに少し書かせてもらったので、是非お越しください!